プラタナス
つぶら実の音符のやうなプラタナスららばいららばい雨に眠れる
渇水の湖いくつ土石流犠牲者生みて梅雨深みゆく
泥水に溺れてゐたりこんな夢現実にゆめ起きないでくれ
ひんがしの空に眉月浮びつつ暮れゆかむとす凶多き年
産土に歌詠みわれは誓ひたり己が心に素直に詠むと
初春から縁起良きかな吾が引きし御籤に大願成就とあるは
帰省せしわれに聞かすとマンドリン姪が弾くなり正座して聴く
マンドリンに姪が弾くなる「異邦人」口遊みつつ愉し正月
最高の正月三日ぞま乙女の姪が弾きゐるマンドリン聴く
君も吾も人魚になりてきらきらと海に戯るわれの初夢
名古屋弁でお久しぶりの「やつとかめ」言ひつつをらむ天国で伯母は
「雨もまた良いもんだね」と笑みて言ふ雨に濡れつつ訪ね来し友
きらめきの天使と雪を詠みにけり雪の怖さを知らざるわれは
どのやうな歌を詠んだら良いだらう迷ふ愉しさわれにまだある
歳晩の施設の門に見送りぬ里帰りする君の背中を
幸せと言へば言へるか仲間らとまた介護士と初日を拝む
自らの衰へばかり呟けり正月二日の電話に母は
電話にて母の愚痴聴くそれのみが施設暮しのわれの孝行
最近の『短歌』作品です。如何。