2016-01-28 風の咆哮 佳久徒然草 何もせずけふを過してしまひたるわれを叱るか風の咆哮 女好き優柔不断の性格をもてあましつつけふも生きゆく きのふより青まばゆしと元日の空眺めをり頬寄せ合ひて 穏やかに年迎へたるめでたさを分ち合はむと母に電話す 妹がしたためくれし嘉の一字その筆勢は自由奔放 覚め際の夢不思議なり麻痺解けて自由自在に水中泳ぐ 鈍行に乗りて雪積む越後路をひとり旅する暁の夢 三年前の『正月』の『短歌』作品です。如何。
2016-01-27 勇猛果敢 佳久徒然草 あすはまたあすの幸せ来るはずよ夕焼け空を見つつ君言ふ 優しくて勇猛果敢のわれをらむひろき宇宙のどこかの星に 夢に来て電話番号教へ呉れしロシア乙女よ名はカトリーナ 車椅子を汝が押し呉れてさ緑の風吹き渡る犬山をゆく 二十日ぶりに昼を雨降る諸木々にボレロのやうに昼を雨降る おそらくは死の間際まで詠むだらう優柔不断の己の歌を 初雪の頃によき人あらはれて結ばれさうとふと湧く予感 五年以上前の『短歌』作品です。如何。
2016-01-27 夢の御告げ 佳久徒然草 酒酌みて人生論を闘はす十年ぶりに会ひたる友と 施設での叶はぬ恋を告白す幼馴染の友と飲みつつ 旧友も胡麻塩頭となりにけりすぐそこにまで迫る五十代新しき歌集作れとけふもまた師は言ひ賜ふぜひ挑みたし 九月より大晦日までモテ期とぞ夢の御告げを信じてみむか 帰省して母の愚痴聞くそのことが幸せなりと思ふ麻痺われ 明日逢ふを君と約せりその明日が必ず来ると疑ひもせず 五年前の『短歌』作品です。如何。
2016-01-25 はないちもんめ 佳久徒然草 憎しみを生むばかりなる戦ひを支援するなど以ての外だ 二メートル隔て互みに雨を見る 和解の言葉いつ掛けやうか あんたなんか下の下の男それなのに何か気になる はないちもんめ きのふ夜叉、けふは子猫のやうな汝れ 千変万化をむしろ愉しむ Tシャツの汝が腕の白まぶしもよわがめぐりなるをみなの誰より ハイボールに酔うて候車椅子足に漕ぎつつ右往左往す うつつとも夢とも分かず梅雨の夜の闇天井に眼が現れつ 昨年の夏の『短歌』作品です。如何。
2016-01-24 人造の闇 佳久徒然草 行き先は夏の港ぞ人造の闇突つ走る列車に揺られ 人造の闇に轟き止まずして港に向ふわれが列車は 地下鉄に約十五分揺られつつどちらが北か分らなくなる 名古屋港ガーデン埠頭に汝れと来て胸深く吸ふあをき潮風 アクアリウムのチャップリンなり飄々と大水槽を泳ぐ翻車魚 渇水の湖いくつ土石流犠牲者生みて梅雨深みゆく 泥水に溺れてゐたりこんな夢現実にゆめ起きないでくれ 上記の『短歌』作品は、二年前の初夏に作ったものです。如何。
2016-01-23 夕潮にほふ 佳久徒然草 けふもまた体温超えの暑さなり雨足らぬまま梅雨明けて、夏 ひとしづくまたひとしづく肩に落つ車椅子押すヘルパーの汗 シキソクゼクウクウソクゼシキ地下鉄の向ひの席のま乙女の腿 麻痺の吾も一票投ずヘルパーの友がひた推す女性候補に 奢るからビアガーデンについて来な 三年ぶりに会ひしK言ふ おそ夏の上野間駅や対向の列車待つ間を夕潮にほふ 穏しかる電車の揺れに委ねつつつひに眠りへ落ちゆかむとす これらは四年前の『短歌』作品です。如何。
2016-01-22 人生樹海 佳久徒然草 ねむりへと連れ戻さるる抑揚ぞN介護士のモーニングコール 父逝きて七度目の夏迎へつつ人生樹海さまよふばかり ちちのみの彼岸の父よこれからのわれが航路を御示し給へ 願はくば酒酌み交し亡き父と人生論を語り明かさむ どしや降りの石くれ道を迷ひつつ迷ひつつ意識薄れゆく夢 「ハナミズキ」聴けば涙がこぼれ来てつくづく感ず齢五十を 杖代りにわが車椅子押させてと母はささやく傘寿の母は 四年前の夏の『短歌』作品です。如何。
2016-01-22 堂々巡り 佳久徒然草 堕天使か痴女か天女か短夜の夢に現れ手招く女人 十日後に逢ふを約せりNさんと三年ぶりに逢ふを約せり 君と逢ふその悦びに眠られず三時ああ四時また寝返りす 母校へと向はむとして迷ひつつ堂々巡りの暁の夢 約束の場所に君来ず五分過ぎまた十分と時ゆくばかり はつ夏のひかりのやうな笑顔なり三年ぶりに逢ひたる君は 似合ふわと赤きTシャツ選び呉れつ主婦歴二十年姐御肌の君 五年前の夏の『短歌』作品です。如何。
2016-01-21 白き雲 佳久徒然草 白き雲空にぽよんと浮びつつ無性に眠し立冬の午後 五十歳の吾はまだ信ず相性のぴつたりと合ふ女性がゐると 相次ぎてふたりの姉を亡くしたる寂しさをまた呟ける母 あすもまた新たな出会ひがあるだらうそれを信じてさあ眠らうか 宇宙には地球そつくりの星在りてわれそつくりのいのちもをらむ 「今晩もあなたと夢で逢ひたいわ」君のメールに元気を貰ふ 霜月の日暮れせつなし豆腐屋の喇叭の音が聞きたくなりぬ 五十歳の『晩秋』の『短歌』作品です。『彼女(妻)』を『友人』のひとりとして付き合っていた『時期』です。如何。
2016-01-21 城山の樹々 佳久徒然草 城山の樹々の緑の眩しもよ木曽川よりの風を受けつつ 脳内に居座る鬱が消えてゆく木曽川よりの風に吹かれて われといふ摩訶不思議なる多面体けふは歌詠み啓美に候 午前二時襲ふ尿意に目覚めたり介護士を待つ長き長き五分 歌詠みが一首も詠まず床に就く雨のきのふも快晴けふも いつまでも若くはないぞ水面の胡麻塩頭のわれが吾に言ふ 水無月の雨に想ほゆばあちやんのつぶ餡入りの大蓬餅 三年まえの『初夏』の頃の『短歌』作品です。如何。