残月
外出時マスク着用の義務が増えここの施設の冬が始まる
職員みなマスクに顔を覆ひつつここの施設の冬が始まる
流感の予防接をけふ終へてここの施設の冬が始まる
奪はれし魂なのか にしぞらにかみふうせんのやうな残月
駅前のベンチに握り飯喰へば足元に来つさすらひ鳩が
新しき低床市電に揺られつつ小春日和の豊橋をゆく
乗降客をらぬ前畑停留所扉開けざるまま発車せり
福祉学ぶ日焼け少年校庭を我武者羅にわが車椅子押す
福祉学ぶリボン少女よ校庭をおずおずとわが車椅子押す
友からの喪中葉書が卓にあり啓の一字が雨に滲みて
天国に召されし友の幾たりを住所録より消して立冬
愛しい愛しい『彼女(妻)』は、実家に『帰省』しています。寂しさにじっと耐えている俺です。