マンドリン聴く
なま温き師走の夜や夏蒲団一枚かけてさあ寝ませうか
職員みなマスクに顔を覆ひつつここの施設の冬が始まる
流感の予防接をけふ終へてここの施設の冬が始まる
うた詠むは言葉の遊びさうだらうもつと気楽に呟けばいい
奪はれし魂なのか にしぞらにかみふうせんのやうな残月
友からの喪中葉書が卓にあり啓の一字が雨に滲みて
天国に召されし友の幾たりを住所録より消して立冬
雑念の塊で良し偽らず己がこころを歌に託さむ
君も吾も眠りの神の臣下なり小春日和の午後のひととき
「不愉快な思ひをさせてごめんね」とまづ君に言ひけふが始まる
ひんがしの空に眉月浮びつつ暮れゆかむとす凶多き年
快きプレッシャーなり歌友らの賀状の多く「良き歌詠め」と
産土に歌詠みわれは誓ひたり己が心に素直に詠むと
初春から縁起良きかな吾が引きし御籤に大願成就とあるは
ぽち袋麻痺のわが手に握らせつ八十歳を越えたる伯母は
帰省せしわれに聞かすとマンドリン姪が弾くなり正座して聴く
マンドリンに姪が弾くなる「異邦人」口遊みつつ愉し正月
最高の正月三日ぞま乙女の姪が弾きゐるマンドリン聴く
最近の作品と五年程前の作品です。如何。