月の冴ゆ
中天に蒼皓々と月の冴ゆ恋失ひし彼の夜の如く
常滑の路地裏巡る一頭の青すぢ揚羽に導かれつつ
このカフェの丁髷姿のまねき猫 柴山庄山わが伯父の作
八十二歳あした迎ふるおふくろに何贈らむと迷ふ愉しさ
誕生日に靴下贈る繰り返し脚冷えるのと愚痴言ふ母に
ヘルパーを頼みて知多へ向ふなり八十二歳の母に会はむと
おふくろよ遠慮なさらずこの俺に日頃の愚痴を言ひて下され
八十二歳?違ふのけふより二十八よ 声朗らかにジョーク言ふ母
啓美から靴下貰ひ嬉しいよ 一期一会の母のほほ笑み
いつまでも手を振る母よ鳶色のシルバーカーに身を委ねつつ
車椅子を遊具のやうに乗り回す福祉学べる小学生は
麻痺の吾は子らに説きたり車椅子は唯一無二の足そのものと
これらの『短歌』は、昨年の秋に詠んだものです。如何。