虚々実々徒然草

五十代半ばの男性車椅子生活者の日記です。

怠惰の虫

メールにてけさ送り来し振袖の姪の画像を「壁紙」とする

居座れる怠惰の虫を払はむと豆に打たれつ鬼面被りて

キライといふ君がひと言気になりて果せざりしよ一日一首

夢にては幾度もキスを交ししにオハヨウのみのバレンタインデー

諍ひの原因われにあるらしも幾度詫びてもだんまりの君

だんまりの戦術けふも続くらし頼むから機嫌直してくれよ

のほほんとネットサーフィン繰り返し気が付けばけふ五十一歳

三年前の『作品』です。この時点から『彼女(妻)』を見る目が、『友人』から『恋人』へと移ってゆきました。

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三河湾

さくら餅食べつつ母と嵐山の桜に酔ひし思ひ出語る

存分に己が生き方愉しめと父の顔に似る雲が語り来

そよ風に吹かれて思ふふるさとの青木稲荷のけふは縁日

さくらさくら散るばかりなる矢作川越えて列車は岡崎に入る

喫茶店肉屋駄菓子屋呉服店がらんと寂し昼の路地裏

トンネルをひとつ越えれば車窓より陽にきらめける三河湾見ゆ

大垣行き新快速の車窓より三河湾見ゆ束の間あをし

三年前の春、初めて豊橋に行った折りに作った『短歌』です。如何。

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君の唇

太平洋高気圧まだ衰へずもわんと暑し彼岸明けの朝

身の裡に怠惰の虫が棲みつきて一首も成せずああけふもまた

十三夜の月かげあをし初めての恋失ひし彼の日のやうに

われはいまどこにゐるのか地下街の人の流れに流されてゆく

木犀の香に想ふかなせつせつと恋文書きし十六歳の秋

敬語にて声掛け呉るるがこそばゆし実習生と園を散歩す

柔かくそして意外と冷たしよ初めて触れし君の唇

最後の一首(短歌)は、現在の『彼女(妻)』との初めての『キス(接吻)』を詠んだものです。

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ぽよんと浮ぶ

白き雲空にぽよんと浮びつつ無性に眠し立冬の午後

五十歳の吾はまだ信ず相性のぴつたりと合ふ女性がゐると

相次ぎてふたりの姉を亡くしたる寂しさをまた呟ける母

あすもまた新たな出会ひがあるだらうそれを信じてさあ眠らうか

宇宙には地球そつくりの星在りてわれそつくりのいのちもをらむ

「今晩もあなたと夢で逢ひたいわ」君のメールに元気を貰ふ

霜月の日暮れせつなし豆腐屋の喇叭の音が聞きたくなりぬ

きょう、五日ぶりに『彼女(妻)』が帰省より帰って来ます。とっても待ち遠しいです。

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以ての外だ

憎しみを生むばかりなる戦ひを支援するなど以ての外だ

二メートル隔て互みに雨を見る 和解の言葉いつ掛けやうか 

あんたなんか下の下の男それなのに何か気になる はないちもんめ 

きのふ夜叉、けふは子猫のやうな汝れ 千変万化をむしろ愉しむ

Tシャツの汝が腕の白まぶしもよわがめぐりなるをみなの誰より

ハイボールに酔うて候車椅子足に漕ぎつつ右往左往す

うつつとも夢とも分かず梅雨の夜の闇天井に眼が現れつ

きょう、二件目の投稿です。如何。

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風神雷神

沈丁花匂ふ夕暮れ見つめ合ふわれらに時はうたた寝始む

風神の唸りに応へ雷神が雹降らせたりけふ春一番

まつたりと午後の陽を浴む雛の日の雌雛雄雛の如くにわれら

晴れながら雪降り始む鎮魂の三月十一日午後二時四十六分

汝れも吾も不確実の明日信じつつ笑顔に交す おやすみなさい

さくら木の蕾ふくふく膨らめり恋に励めと囁くやうに

うた詠めといざなふ如し汝が頬のうすくれなゐのけふの夕映

上記の『短歌』の七首は、二年前の三月十一日(東日本大震災忌)前後に作ったものばかりです。

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愛しい奴さ

帰省する日の天候は雨天らし五日前よりサイトを見つつ

帰省する霜月九日日曜日予報通りに雨が降つてる

よう来たと出迎へ呉れし垂乳根よこの夏よりも顔やや細し

三十分経たぬに尿意襲ひ来る老いの兆しの過活動膀胱

右傾化の進むにつぽん危ぶみて野党候補に票投じたり

まつすぐにわれを見つめて君は言ふ 貴方はいちばん大切なひと

本当に愛しい奴さ 諍ひを愉しむやうに拗ねてゐる君

六首目、七首目の『短歌』は、俺が『彼女(妻)』との『結婚』を強く願うようになった時期の『作品』です。

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謹賀新年

さ緑のひかり生みつつプラタナス五月の風と戯れてゐる

 

君と逢ふ日を約したり夕空もこころも晴れて薫風が吹く

 

あしたにはあしたの風が吹くさうな順風逆風 いや、恋の風

 

わが身より鬱飛んで行けさ緑の若葉励ます風に乗りつつ

 

諸木々の若葉きらめく五月来ついざ張り切つてけふを生きやう

 

ああ五月トトロ兄弟したがへてむかしの知多を闊歩する夢

 

目覚むれば吉事があると夢に来し乙女告げたり信じてみむか

 

明けましておめでとうございます。本年も宜しく御願い申し上げます。

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残月

外出時マスク着用の義務が増えここの施設の冬が始まる

職員みなマスクに顔を覆ひつつここの施設の冬が始まる

流感の予防接をけふ終へてここの施設の冬が始まる

喪を知らすふみが届きぬ山茶花山茶花梅雨の降り注ぐ午後

奪はれし魂なのか にしぞらにかみふうせんのやうな残月

駅前のベンチに握り飯喰へば足元に来つさすらひ鳩が

祖母の背に負はれて乗りし思ひ出の路面電車が走る豊橋

新しき低床市電に揺られつつ小春日和の豊橋をゆく

小春日の豊橋巡るまつたりと路面電車豊橋めぐる

乗降客をらぬ前畑停留所扉開けざるまま発車せり

福祉学ぶ日焼け少年校庭を我武者羅にわが車椅子押す

福祉学ぶリボン少女よ校庭をおずおずとわが車椅子押す

友からの喪中葉書が卓にあり啓の一字が雨に滲みて

天国に召されし友の幾たりを住所録より消して立冬

愛しい愛しい『彼女(妻)』は、実家に『帰省』しています。寂しさにじっと耐えている俺です。

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麻痺ゆゑに

あしたには熱が下がるよゆるやかに移ろふしろき雲のささやき

冬将軍退く気配なし節分の夕べを五日連続の雪

鬼の役に徹して愉し仲間らに追儺の豆を投げられ放題

麻痺ゆゑに喋れぬ君の右足に床に書きたり「チョコをあげるね」

面会に来てくれし母自らの診察予定をまづわれに言ふ

離れ暮す麻痺重き吾を思ひつつ眠られぬ夜のあると言ふ母

心配事もう増やすなと数へ歳八十歳の母に言はれつ

過去の『短歌』をまた載せました。御感想を御聞かせ戴ければ幸甚に存じます。

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